大判例

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東京地方裁判所 昭和25年(ヨ)1752号 決定

申請人 日本映画演劇労働組合キネマ旬報分会

右代表者

被申請人 有限会社キネマ旬報発行所

被申請人 有限会社スクリーン・ステージ新聞社

被申請人 有限会社シネマグラフ社

一、主  文

本件申請は、これを却下する。

二、理  由

第一、申立の趣旨

申請人は、「被申請人等が昭和二十五年五月二十六日別紙目録記載の申請人組合員に対してなした解雇の意思表示は、その効力を停止する。被申請人等は組合の承認を得なければ解散してはならない。」との決定を求め、

被申請人等は、主文と同旨の決定を求めた。

第二、判断の要旨

(一)  被申請人三会社は、それぞれ映画雑誌等の発行を主たる目的とする会社であるが、実際には三社共同で経営を行い、主として、被申請人有限会社キネマ旬報発行所を代表的な名称として活動し、人事、経理、経営等はすべて右被申請人名義で行つている。

(二)  申請人組合は、右被申請人三会社の業務を行う従業員を構成員として組織された労働組合であつて、別紙目録記載のものは、その組合員である。

(三)  被申請人三会社は、昭和二十五年一月以降営業成績不振のため業務を継続することが不可能であるとして、右三会社は同年四月以降業務を停止し、更に、右会社の解散を決意し、その前提として、清算のために必要な人員五名を除き、別紙目録記載のものを含む全従業員を解雇することとし、同年五月二十六日申請人組合に対してその旨を通告し、その諒解を求めた。

(四)  申請人組合と被申請人三会社とのあいだには、早田秀雄が右三会社を代表して申請人組合と締結し、同年七月十六日まで有効に存続すると認められる労働協約があつて、この協約には「第五条、会社は、従業員の雇入、解雇、休職、異動賞罰その他人事及び労働条件については組合と合議決定する。」

「第八条、会社は組合の承認を得なければ解散、閉鎖、合併、売却、長期休業等の従業員に重大なる影響を及ぼす行為をしない。」

旨の条項がある。

(五)  右第八条の経営参加条項は従業員の待遇に直接関連するものではないから、これに違背してなされた解散も、十分な協議又は組合の承認を得なかつたというだけでは無効となることはない。

すなわち、本条違反の解散はせいぜい債務不履行の効果を生ずるにとどまるから、これにより申請人組合に囘復すべからざる損害を与えることにはならない。従つて、解散につき申請人組合の承認を求むべき旨の仮処分は、その必要がないというべきである。

(六)  次に、被申請人三会社の意図する解散が、公序良俗に反して無効であるとは認められぬ本件においては右解散を前提とする本件解雇はやむを得ないものであるというほかはない。

而して、本件解散ないし解雇について、被申請人三会社は申請人組合の意向を全く無視したわけではなく、会社の整理再建等に関して組合側の意見を徴していたこともうかがわれるし、解散の場合の解雇につき被申請人会社にこれ以上の協議を強いることは困難であるといわなければならない。従つて、本件解雇は右協約に違反して無効であるということはできない。

(七)  さきに認定したように、本件解雇は解散を前提とする従業員の全員解雇であつて、被申請人三会社が、会社の解散に籍口しことさらに、申請人組合の組合員だけを差別待遇して解雇したということは認められないから、本件解雇が不当労働行為であるといい得ない。

(八)  要するに本件解雇は、申請人が主張するような理由では無効とはならないから、その無効なることを前提として地位の保全を求める本件仮処分の申請は失当である。

よつて、申請人の本件申請はいずれもこれを却下すべきものとし、主文のとおり決定する。

別紙目録<省略>

(裁判官 柳川真佐夫 古山宏 高島良一)

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